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探索51日目 2008-08-28
ここの所、嫌な夢を見る。
火の宝玉に行軍している故に、周囲の地熱が妙に高いせいなのだろうか。
起きると汗でびっしょりになっている事が多い。


詳細は不明瞭なのだが、ほぼ同じ内容の夢であると、不思議と断定できていた。

見も知らぬ街、見も知らぬ冒険者達。
比較的和やかな活気の中、私は様々な者達に混ざることなく、外からそれを見ているのだ。
不思議と孤独感はなく、むしろ活気を眺めることを楽しんでいたように思う。



それでも数名の知人が出来、穏やかに会話を交わす中、鬼が姿を現す。
それは身の丈が二回り以上も大きな、青銅色の鬼人。
四肢は長く、腿から大きな翼が生え、肘からはもう一対の大きな腕が生えた、異形の怪物。
瞳は赤く光り、背からは長大な刀が生成されていく。
肩口からは鷲が、膿でも出るかのようにねじり出されて来る。

その鬼人には、風がまとわりついていた。
酷く懐かしい風が。平原で私にまとわりついてきたのと同じ風が。

鬼の向こうの岩場から聞こえる声。
遠くで誰かが泣いている。甲高い泣き声。子供の声。
大きな針が刺さって抜けないと、助けを求める声。

私はひたすら、涙ながらに謝ることしか出来ず、そうしながら子供の声を求めて彷徨っているのだ―――。


2nd37.jpg



今日も悪夢を見て、目を覚ました。
ここ数日、あの平原を渡る風に吹かれてからというもの、時と場所を選ばずに何度も見る。
熟睡している時だけのこともあれば、仮眠で浅い眠りを取っているときなど、一貫性がない。

疲れているのだろうか。それとも、少々気を病んだか。
おそらくは後者である可能性が高い。

宝玉が3つ4つ揃ったら、傭兵仲介人に―――ホークアイに連絡を取ることにしているからだ。
全ての宝玉が揃い、エニシダさんの目的の手伝いも終わった頃に、きっとあの斡旋や仲介をする輩はやってくるのだろう。
”南天の一つ星”のフォーマルハウトではなく、”闇に蠢く静寂”のサイレントを求めて。

少々独特な連絡手段である為、遺跡外のひとけのないところでそれを行う事になる。
恐らくTCの面々は地底湖にある市場へと赴いてしまうはずなので、気づかれはしまい。
暖かい山小屋から吹雪の中へと出ていく、その準備ということになるのだろうか。

あまり感傷に浸っている暇はなかった。
まず、宝玉の守護者を打ち倒すことが先決だろう。

私は思考を切り替え、熱波が絶えない火吹き山の山頂を、遙か見上げた。
夜空の紺色に、大地の火のオレンジ色が映り込んでいた。





「はは……本当に来やがったよ、全く欲の強い。」


切り立った崖の上に、その男は居た。噂通り、あれが噂の火の宝玉の守護者なのだろう。火吹き山には魔法使いは付き物だが、見た目は明らかに物語で言うそれから外れていた。

実力者、なのだろう。戯けたさまを装っていてもそれは隠せていない。
姿形は全く似ていないが、あの物腰と黒眼鏡、どこか実兄を連想させた。

だが、郷愁に駆られている余裕はない。
どうにも読みづらい手合いだが、この手の輩は命を奪うまでせずとも、屈服させれば目的は達成できるはずだ。
尤も、屈服させるまでが難しいのもまた、この手の輩の特徴でもある。


「どうやらもう宝玉を手にしているようだしなぁ……ちょっくら気合入れてやるかねっ!」


どうにも毒気を抜かれる物言いだが、容赦の必要はないだろう。私は迎撃型の手甲を填め、先日鍛えてもらった蒼白く光る刃を持った短剣を、肩口のホルダーから引き抜いた。
基本的には一対一だが、何分相手は術士、何をしてくるかはわからない。


「それはどうも。ならば貴方流に言い換えて、『存分に楽しみましょう』か。」


言い、刃を男に向けて腰を落とした。
途端、件の風が轟々と私を包み、戦場への路を開いた。
アルクさん曰く、マナの含まれた風。それは異様とも言える存在感。
ここ最近、マナを吸引しすぎて廃人になった者や、身体が変調を来した者の噂を耳にする。
私もいずれそうなるのだろうか。

夢で見た青銅色の鬼人の姿、あれはもしや私自身ではなかっただろうか―――

どうでもいい。
今この瞬間に、その力を振るうことが出来れば、遠い未来のことなどはどうでもいい。
それがあの方を助けることが出来れば、この身など幾らでも歪に変貌するがいい。

戦いが始まる。


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