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探索55日目 2008-09-26
宝玉ホルダーの上蓋を取り、歪な緑色の珠を投げ入れる。
途端にそれは鋭角な立方体となり、他三つの宝玉とぶつかり合って澄んだメロディを奏でた。

これで四つ。ようやく半分以上まで来たのだ。
火と地を急ぎ足で得たことも考えれば、残り三つを手にする日も遠くないのかもしれない。
光と闇の宝玉は、地下二階以降を絶えず移動しているなどという噂も聞くが、そのあたりは行ってみればはっきりするだろう。



全ての宝玉を手にすれば、何かが起こることは薄々と感じている。
島全体の影響もそうだが、個々の人間に関しても言えるのだろう。

アルテイシアさんは、自分の中に欠けていた何かが埋まる感覚があると言っていたし、
アーヴィンさんは宝玉を手にする度に奇怪な夢を、現象を体感するという。

エニシダさんは自らの目的を果たし、私は冒険者としての役割を終えるのだろう。
―――そう、思っていたのだが……





「責任」とは、両方にかかる言葉だったらしい。
即ち、武器としても。そして、女としても。
勇気を振り絞って聞いた答えは、飄々とした穏やかな笑みと共に帰ってきた。
肩を、背を包む掌は、大きく温かく。強烈な安堵感と、胸を締め付ける感覚を与えられた。

薄々は感じつつも、どこかで目を逸らしていたことだった。その方が離れるときに辛くないからという、それだけで。
気晴らしの相手か、ただの行きずりか、良くて妾のようなものではないかと、そんな風に思い込もうとしていたのかもしれない。

父の来訪は切っ掛けに過ぎないのだろうと思う。
その場を取り繕うためだけに父にそんなことを言うほど、浅はかな方ではないだろう。
とすると、曖昧のままにしようとしている私は、なんて酷いことをしているのだろう。
酷いことだが、その罪は、どう償えばいい……。

目的が終わってからのことは、分からない、と言われた。
至極尤もではあった。全て終わって暇になってから考えればいい、と。
これは向こうから出された「曖昧」の条件なのか。それとも本当に考えておられないのか。
……それこそどうでもいいことなのだろうか。





いつもならば遺跡外でも、二人きりになる機会はあまりなかった。
エニシダさんに限らず、メンバーは買い出しや取引、地底湖の市場などを見て回る事が多く、探索行動から離れているとは言え、ゆっくりもしていられないのだ。
大抵の場合、主立った取引手段を持たない私は、皆が戻るまで修道院跡の清掃や修繕、夕餉作りなどをしていることになる。

2nd41.jpg


だが今回は、極力側に居た。
買い出しに行くときも、市場を見て回るときも。
荷の手伝いなどをしながら、側に居た。
無論邪魔にならないよう、一、二歩離れた距離を保ちつつだが、非探索・戦闘時くらい、少しでも居たかった。
私はすこし、おかしくなっていたのかもしれない。

当の本人には少し不思議な顔をされたが、咎められることはなかった。
流石に歩きながら腕に触れるような真似は出来なかったが……。








想う人に想われるのが嬉しい。
嬉しくて目の周りが熱く、歯の根が震える。

全てが終われば離れなければいけないのに、こんなにも苦しく、嬉しい。





いつか明かす時が来るのだろうか、この胸の内を。
女として、使い手として慕うほかに、大きな感情があることを。
おそらくは常人であれば理解できない、この感情を。

地殻変動を起こす前の島で起こった、おそらくは明確な指示による、戦闘時の精神的な解放。
扉を開け放つような、重い拘束具を取り去るような。
あれ以来、組んだときなどにごくごく稀に発生していたが、当然のことながら表立って示すことはなかった。
正体はつかみかけている。だが、これをどう説明すればいいのだろう……。
あるいは説明などをする必要はないのかもしれない。

わからない。


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