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探索59日目 2008-10-24
ジョシュアという旅人からそれぞれに託された、マナドリンクと称される液体は、ごくありふれた瓶に入り、ごくありふれたコルクの栓がなされていた。

言われなければただの水と信じてしまいそうな、その透明な液体は薄ら甘く、そのくせどこか南国の果物を思わせるような、濃い風味を宿していた。

2nd45.jpg


彼が何を思ってこの瓶を探索者に託しているのかは、窺い知ることが出来ない。
『私にはもう必要ないから』と言う。
何故か。
もう必要のない、ということは、以前は必要があったということだ。
彼も以前は探索者で、このマナを集めていたということなのか。
志半ばで諦めざるを得なくなり、別の探索者にそれを託していると考えるならば、自然な成り行きだろう。

あるいは―――これ以上必要がないと、つまり必要な分は既にあるから、というのは考えすぎだろうか。
彼は何処か諦観を漂わせた、若い風貌の割には枯れた雰囲気の無害な輩に見えた。実のところは不明ではあるが。

どのみち彼にその目的が無くとも、マナを用いて悪用を図る者がいないとも限らないだろう。むしろその疑いは限りなく濃い。





聞いた話では、どこぞの軍属の者達がこの遺跡に潜伏しているらしい。聞く噂はいずれも素性の怪しさを漂わせていたし、実際に我々が遭遇した14隊とやらも、練度の低さはさておいて、その一部のだろうと思われた。

どこの国かは知らないが、軍属が未知の力に目を付けたという事であれば、厄介極まりない話だった。例外はあるにせよ、大抵は目的遂行のためであれば何ものをも厭わぬだろうし、何よりもその連携は脅威となる(やはり例の14隊とやらは除外する)。

軍に雇われていたときのことを思い出し、私は知らず重い溜息を吐いていた。当たり前と言えば当たり前だが大抵の場合、軍属は戦において、金で雇われた傭兵を人とも思わないからだ。
未だに例外を、ケイロンさんしか知らない。





人体を狂わせるとされていたマナドリンクは、服用した私の身体にも、ちょっとした変化をもたらしていた。
希釈してはいるのだろうが、確実に含有されるマナと、呪われた一族・レギオンの血脈の融合は、身体の新陳代謝を僅か狂わせていた。

同様に服用したアルクさんの変化はもっと顕著で、ひどい息切れと目眩、瞳の色彩への影響が出ていた。
本人曰く、魔法で慣れている症状とのことだが、それにしたって用心に越したことはないだろう。二番隊の他二名はそういうことには聡いので、今後の症状に気付かないということはないだろうが……。

私はというと、この凄まじいまでに伸びた髪だ。
腰までに至った長い髪は、誰がどう見ても戦闘時の邪魔でしかなく、切らざるをえなかった。
未知のものを服用した結果がこれだけで済んだということは、僥倖としてもよいのかもしれない。



切るのはセレナさんに頼むことにした。
短剣で千切るように切ろうとしていたのだが、それはないんじゃないかと見咎められたのだ。
考えてみれば行軍中でもなく、大所帯故に、ハサミのような日用品を所持する余裕もあったのだった。
途中に髪型を弄ってさんざん遊ばれたのだが(しかもそれをアーヴィンさんが見て腹を抱えて笑っていたのだが)、綺麗に切ってくれたので、それくらいの笑い所は報酬と考えておくことにする。

冒険で痛んだ毛先は失せ、髪全体がいきなり全て新しくなったので、サラサラになって気持ちが良かった。

いつぞや櫛を頂いたとき、髪を伸ばしてみると伝えたのだが、結局切ることになってしまった。
或いは忘れてしまわれただろうか。髪の長短など、取るに足らないことなのかもしれないが。
マナの変化で伸びた髪などは、あまり気持ちのいいものではないかもしれない。





そういえば、マナドリンクを飲んだら、ついこの間までの鬱勃とした感情や、燻っていた感覚などが全て消え失せ、嘘のように鎮まっていた。
落ち着いたというよりは、それらに薄ぼんやりと霞がかって、どうでもいいような拘りとなり、溶けていったような感覚に近い。

これもマナの効果のうちに入るのだろうか。
だとすると、マナの摂取も悪いことばかりではないのかもしれない―――……?


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