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探索60日目 2008-11-05
上空より、異形の者達が襲いかかってきた。
黒い翼に、人とも思えぬ無貌に灯るのは、表情のない赤い瞳だ。
鋭い爪は闇の力を宿し、咆吼は大気を切り裂いていた。
忘れもしない、これが最初の接触だ。
マナによって変貌を遂げた、人ならざる人の姿。
そして、フォーマルハウト・S・レギオンの未来を暗示する姿だ。



彼女は真っ黒にこそならず、
人としての自我を保ちつつ、
自在に変貌時の姿とそうでない時を、自在に使い分けることが出来るようになる、だろう。

だが、多大なる犠牲をも払うことになる。
マナと血統、その他のものの混在により狂った体質は、
三大欲求を必要としなくなり、やがて寿命をも超大に伸ばした。

中でも大きいものは―――記憶の消失。
かの方の幸せを願い、離別して独り彷徨ううちに、記憶は薄れゆく。
過去を思い出せぬまま、何故忘れたのかも忘れたまま、数百年の刻を生きることになるだろう。

そして思い出し、かの方が幸せな生涯を送ったと知り、独り死に行く。
野垂れ死にに近いだろうが、それは満足そうに。



私は、窓から外を眺めるように、黒い翼を持つ者たちと対峙するフォーマルハウトを見ている。
端から見ると、まだまだ動きがなっていない。洗練されておらず、若い。
気恥ずかしさすら沸いてくるのは、やはり過去の自分を見ているからなのだろう。

―――私は、この島に今現在存在する、フォーマルハウト・S・レギオンの、未来の姿である。
そして、死したただの亡霊であり、思惟だ。



冥界に赴く途中の死出の旅は、過去へと赴くことも適ったようだった。
ただし、過去への『路』は厳しく定められており、当時の自分に影響を及ぼすことは殆ど出来ない。
『見ているだけ』なのだ。あるいはただ、『風』を送るだけ。

懐かしかった。当時の仲間達―――そう、確か九人で隊を作って冒険していたのだった。
『かの方』の姿を見ることも出来た。水に映った姿だけだったが、驚いたような顔をされたのは、こちらに気付いたのだろうか。……そんなまさか。
探索で疲弊し、ボロボロになった事があっても、確かにこの時が、生涯の絶頂期だったのだと思う。



それでいい、フォーマルハウト。ああ、なんと懐かしい自分の名前。
そのままを行けば、確実にかの方に、穏やかで平穏な幸福が訪れる。
ままに進め、未来圏からの風の力を受けて。
辛くとも、悲しくとも、失われようとも。
白鬼と成り果てても。



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