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探索61日目 2008-11-09
小さな焚き火の爆ぜる音が、夜の深い木々の間にこだました。
脇には近くで狩った野鳥の煮込み鍋の残りや、明日の為のパン種が寝かせてあり、少し離れたところでは、エゼ君とナミサ君が毛布をかぶって、死んだように眠っていた。
いつもよりもずっと小さな焚き火。
それもそのはず、我々は本隊とはぐれてしまっているのだ。
故の小さな篝火だった。

見張りと言うこともあり、スキットルから強いラムを一口だけあおった。
これで一時的にだが、絡み付くような森の寒さからは逃れられる。
僅かな酔いは、寒さですぐに消えて無くなった。



黒い翼。
異形の者に躊躇してしまったのは、あの外観に怯えたからか。
違う。
同情したからか。
違う。
では何故か。

―――おそらく、自身の未来を。
マナに冒された者の末路に、自分を見たからなのだろう。
故に刃の速度を落としてしまったのだ。
おそらくはTCで一番早く、かつ分かり易く、マナの影響が出始めたのは私なのだろうと分かっていた。

先日にマナドリンクを服用してからは、少しずつ、だが顕著にマナの影響が出ているのがわかった。
髪が伸びるほどの劇的な変化はなかったが、何か、ふとした拍子に「兆候」が現れるのだ。
「兆候」自体は服を着ていれば人目に触れることはなく、意識すればフッと消えるので、本当にマナの影響なのかは分からなかったが、タイミングから言って妥当とも言えた。

他の病気や症状なのかもわからないが、私のことで他の者達を、そしてエニシダさんの手を患わすわけにもいかない。
故に、誰にも告げていなかった。
故に、他の誰も知らなかった。
幸いなことに、アルテイシアさんの言うような、精神的に冒されたような兆候はないと言えた。





エゼ君とナミサ君とは、昏々と眠っている。無理もない、あの激戦の後だ。
体力を回復させるには、眠るのが一番良い。
幸い命に別状のない傷だったので、明るいうちは消毒と傷口を清潔に保つことに専念した。
昼間は彼らのことだけを考えた。



あの後、本隊は無事だったのだろうか。我々が森に逃げ込む時に上空に見た、新たな黒い翼の編隊とぶつかっていなければ良いのだが、この場合の嫌な予感は往々にして当たることが多い。
集合場所も決めてあるので、大丈夫だと思いたいが―――。
夜間、見張りの時間は、他の隊のことを考えた。



エゼ君が起きてきて、見張りを替わりましょうかと言ってくれた。
大丈夫だと言いたかったが、流石に体力も限界だった。
と、いうよりも、言われて限界だということに気付いた。
有り難く毛布にくるまり、草の上に横になった。
短剣を抜き身のまま握って眠ろうかと思ったが、それはやめにした。



眠る前に夜空を見上げ、内側のポケットに入れてある指輪の上に手を宛て、こっそりと就寝の挨拶をした。
散開する前に言われたのだが、「将来のことも視野に入れて渡された」指輪だ。
今は返答や対応などを考えるときではなかったが、そんな別件の苦悩が、この時は何故か無性に安らいだ。
瞳を閉じ、眠りに落ちるまでの間は、あの人のことを考えた。

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