FC2ブログ
2018 12123456789101112131415161718192021222324252627282930312019 02
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

探索66日目 2008-12-24
(※遅刻した絵の補完です)



雪がはらはらと舞う季節になった。白く降ってくるそれを眺めていると、さまざまな事が思い起こされる。
傭兵時代、仲間であった者の指を切断し、喉を突き、首級を上げたこと。
つい先日、生涯無二の胸の内を告白し、また、されたこと。
人生の節目に雪が降るというのは、何かのジンクスなのだろうか。

そんな事を考えていたら、背後から声をかけられた。
セレナさんだ。濃い灰色の裾が広がったコートを着て、片手にホットワインを持っている。
声をかけられるほど、ぼうっと夜空からの雪を眺めていたのだろうか。
返答し、私はメンバーの歓談の中へと戻っていった。


修道院跡の聖夜祭。
よもやこの島に来て、三度目の聖夜祭を迎えるとは思わなかった。
一昨年は血生臭く、去年は暖かく。
今年はまるで、メンバーが本当の家族のように近く感じる。
新鮮味がないね、などと笑いながら盃を交わす皆の顔は明るかった。

話も特別なものではない。先日の取引はどうだったとか、いい武器が出来たねとか、日常と化した冒険の話だった。
故に今年は脳天気な宴会という風ではなく、何処か落ち着いた祭事のようだった。
ホルダーから宝玉を一時取りだし、中に蝋燭を入れた即席のランタンに火が灯る。
テーブルの上に置かれた、グラスの中の小さな蝋燭が揺れる。
和やかで暖かい夜に、暖色の火がそこかしこに灯る。



真夏の海辺で試合をしたギルドの数名が、ひょこっと中庭に顔を出した。
ハーフエルフの青年や、肌の濃い赤毛の踊り子など、相変わらず元気そうだ。
またいつか、と、そして暮れの挨拶などを交わす。
随分と私もこの島に馴染んだのだと認識させられた。

カンテラを持った中年の詩人も挨拶に立ち寄った。
相変わらずつかみ所のない穏やかな人だ。だが、どことなく寂しそうに見えたのは私の気のせいだろうか。
先日、亡霊か残留思惟か本人か、それすら分からぬ眼帯の大男―――この詩人の相棒だ―――と相見えたことは報告するべきだろうか。
逡巡は表へと出ることはなかった。

薬師の女性も挨拶に来ていた。いつもの薬品取引のついでのようだ。
相変わらず悠々とした立ち振る舞いで、一種の格好良ささえ伺わせる。
歓談の合間、こっそりと妙な誤解をしていたことを詫びた。
実のところ、まだあの方はこの女性との方が相応しいのではないかという思いは完全に拭えない。
やはり散々からかわれたが、嫌な気分ではなかった。

ふと門を見ると、長身の男性が見えた。
灯りに揺れる金髪とレザーのジャケット。頬の二条傷。
こちらには入って来ず、私と視線が数瞬交差するだけであった。
そしていつしか、夜の闇に消えていた。これから寄るところがあるのだろう。
そうだ。傭兵同士の挨拶などは、これだけでいい。
門の脇には、無造作に包まれた酒瓶が置いてあった。

暫くすると夜の闇から染み出すように現れた人影が、同じように門の脇に立っていた。
戦慄。血が凍りかける。
だがその人物は何をするでもなく、昏く笑み、包みを置いて消えていった。
考えてみたら流石に人狩りとは言え、ここで事を起こすことはないだろう。
包みの中身は洋菓子のシュトレンだった。
『西洋料理店ワイルドキャットハウス』と書かれたカードが入っていたのは、見なかったことにしよう……。



蝋燭の火が揺れる。
和やかな時が流れる。
談笑。
仲間たち。
慕う人。
友人。
冒険仲間。
同業者。



雪の夜。
様々な人が集う夜。
冬だというのに暖かい、そんな夜。
いつまで続くのか分からない平穏だが、だからこそこの時を大切にしたいと、心から思う。






―――……。
気付いた者は、いるだろうか。
否、いはしまい。
居てはいけない。
気付かれてはならない。

歩行雑草の少女は、いつもと違う何かに気付いたようだが、それが何か分からずにただ、降りしきる雪を見ていた。

そんなものたちが集い始めたのは、陳腐な言い回しだが、聖夜の奇跡だとでもいうのだろうか。


xmas2008_02.jpg



己の影が。

『ふふふ、面白そうじゃない? 少なくともあの島周辺にいるよりは、ね。』

『外に出られるとは。まあ……たまにはいいか。久々を楽しむとしよう。』



本来の自分が。

『すごい……。鏡じゃないのに、ナミサの姿を見られるなんて。』



陰から見守る肉親の霊が。

『ありゃ、見つかっちゃったりしませんかネエ? 』



回想の中の陰が。

『人形が酒宴だなんて、妙なこともあるのね。』



未来圏からの風が。

『あな、懐かしや。酒宴の風景とは喃……』



そして、朱い島からの幻影が。

『……元気やったかな、クルツ。風邪とかひいてへんかな……?』





次元や時の交差するこの島において、蝋燭の灯りが照らすこの夜は特別な夜なのだろうか。
星降る夜に、乾杯を。


コメント非表示
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。