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探索78日目 2009-04-10
(※チキレ失敗分の補完です)

■【SIDE:Fomalhaut-Mercenary】

マナによる身体変化は、体質が変わるどころではなかった。
隣り合う世界―――この解釈で正しいのかは甚だ疑問だが―――から、もう一人の私をも引きずり出すことにすら成功していた。

姿形はほぼ変わらない。髪の長さが違うか。
甲冑もそのままだ。

だが、表情や立ち振る舞いは、多少道化じみてはいたが、老成した者のそれだ。
口調も違う。
態度もどこか不遜だった。
何よりも、実体がなかった。透明度が高い。
―――死霊だ。
それでも、この人物は自分なのだと簡単にわかった。

彼女は―――『私』は、北落師門天草、アマクサと名乗った。
どういう由来でこの名なのかは不明だが、区別するには分かりやすい。

死霊……ということは死んだ後を呼び出したのだろう。
外観は今の私と大差がない。しかしこの老成した言動は、どう見ても永く生きた者のそれだ。
つまり私は、少なくとも外見的には、年を取ることがなくなるのだろうか。
永久に若いまま美しく、などという願望の持ち主であれば願ってもないことだろうが、私には不吉の象徴でしかなかった。





■【SIDE:Amakusa-ManaPhantom】

嗚呼。
なんと懐かしき物質世界よ。
そして忌まわしき第二の故郷よ。

回廊に囚われていた私を(偶然だろうが)救ったのは、誰であろう、今までは見るだけしかない風景の中からの救いの手であった。

蔓延するマナの匂い。
遺跡の風景。
心地よい偽の風。
嗚呼。
懐かしき仲間達よ。





島の冒険の後、かの方の幸せを願い、私は無言で何も知らせずに離別した。
途中であの方の子を身篭もっていることが発覚したが、それでも戻ることはなかった。
母と子の、辛いが楽しい旅路だったことはよく覚えている。

だが、幸せは永くは続かず、私は死に、息子も死んでいった。
身体からマナも消えかけたが、私の声無き声に反応したのか、『精霊』と呼ばれるマナに似たものが身体を修復し、蘇生を果たしたのだ。

息子を失ってからは、生きる屍のように各地を転々としていた。
何年だったか、何十年だったか。
そうだ、今際の際に、拾われたのだよ。
一人の、身分の高い者に。―――少しだけあの方に似た男性に。

いろいろあった。
ただ少しばかり似ているだけなので、特に色恋にはならなかったが、その男は野心もあり、一大帝国を築き上げたのだ。
ああ、楽しかったよ。何代にも渡って近衛親兵として仕えたのだ。
大きな戦争があった後は、また放浪へと出ることになったが。



独り彷徨ううちに、記憶は薄れゆく。精霊が記憶に施錠をし始めたのだ。
過去を思い出せぬまま、何故忘れたのかも忘れたまま。

最後は、冒険者の居る街だった。
そこは精霊を抑止する技術の栄えた場所であった。
施錠をする精霊を中和して貰えるまで、大層な時間がかかったように覚えている。

そしてあるルートから、かの方が幸せな生涯を送ったと知り、再び、今度は独りで死んだのだ。
野垂れ死にに近いだろうが、それはそれは満足だった。



はずだった。



「そうだな、そう言ってもいいだろう。
君と別離してからは家の方に帰り、穏やかな余生を送ったとある。」

そう、死神は言っていた。
黒マントにチェインメイルの、顔の半分を髪で隠した青年。
本当だろうか。
いや、嘘はつくまい。つけないだろう。
だが、『嘘は付いていないが、全てを伝えきっていない』という可能性もある。



最後の冒険だ。
死出と過去への旅路だ。
見ているだけ、風を送るだけだが、このままでいられるわけもない。
死神は天界への道を閉ざした。かまうものか。

『   子を連れ 行かな  欲     、 ん』

―――声が聞こえたが、何か動いているのだろうか。
知ったことか。私とは関係なかろう。
くたばれ、地を這う者を見下す輩め。



いずれ行き場の無くなった亡霊は消える。完全な消滅だ。
昇華も来世もなにもない。
なのに因果の風は、異様な方向から行き場をくれた。
檻から私を引きずり出したのは、他でもない『私』だったのだ。

これは別の世界の事なのか。
未来のことなのか。
枝が分かれる前の『私』と、分かれた後の私の巡り会いなのか。
確かめていく余地があるだろう。



嗚呼。
なんと懐かしき物質世界よ。
そして忌まわしき第二の故郷よ。

蔓延するマナの匂い。
遺跡の風景。
心地よい偽の風。
嗚呼。
懐かしき仲間達よ。



愛しき人よ。












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