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探索79日目 2009-04-20
攻撃三倍の法則、という業がある。
元々は制空圏―――自分を中心とした球状空間を展開・認識し、その空間に立ち入る者からの攻撃をことごとく遮断する体術からの派生技だ。
その体術はインヴァルナレイブルと呼ばれたが、応用の型には名を付けなかった。
いつしか勝手に、周囲にはそんな名称で呼ばれるようになった。

インヴァルナレイブルの、制空の圏の上位と言っていいだろう。
入り込む攻撃を流水の如く流し、その力をもって防御から攻撃に移る。
一種の特殊なカウンターといっていい。
これを極めると、気力・体力共に大幅に上昇させることも可能になる。

―――それを、エニシダさんは私に、『授けてくれ』と言ってきた。



元々これは私が作った、というより、偶然型に出来た業だった。
あまりにも特異な技であるため、島に体得した者は10人といないだろう。
それもそのはずで、『心』の置き方が重要な業なのだ。
何か大切なものを守るため、というだけではない。
その外敵に攻撃を加え、こちらへの被弾を減らすという意味もあるのだ。まさに攻撃は最大の防御なり、といった所だろう。
守るためという心に加え、どこか戦の狂気を感じさせるような、そんな業だった。



食事の後、焚き火から少し離れた所で、手合わせを開始する。
鉄鞭と、短剣の交差。私が長ものを持っていないので(剣はまだまだ体得できていない)、そういう組み合わせで行うことになった。
何合も撃ち合い、その度に細かく支持を出し、エニシダさんは恐ろしい早さでそれらを飲み込んでいった。
不足した体術は、業の欠片とマナをたぐり寄せることによって、無理矢理に補っていた。

並々ならぬ才能がある、というわけではないだろう。体術に優れているというわけではないのだ。
この方を動かしているのは―――執念、なのだろう。
狂気などという軽いものではない。それは妄執と言い換えてもいいのかもしれない。
一度は私も垣間見た、夜の闇に沈むような、タールのような黒いそれ。
赤い瞳が時折夜闇に光るような、そんな錯覚を、私は奇妙な心持ちと共に見ていた。



仇に捕らわれているのか。けじめか。
どちらにせよ、この方が今生きている一番大きな理由はそれだ。
決してこの方を幸せに導くことが出来ないそれを、生きる糧にしているのだ。

私は嫉妬という概念を理解できなかったのは、そちらに行ってもエニシダさんは幸せになるからだった。
故に他の女性と妙な疑いがあろうと、私は黒い感情を抱かなかったのだ。勿論、多少の寂しさはあったのは否めないが、それであの方が幸せなら、全くどうということはなかった。

だが、生きる指針となる「彼女」は、エニシダさんを幸せにするのだろうか。
答えは火を見るより明らかだ。
これは、嫉妬と呼ぶべきものなのだろうか?



業を授けてくれと言われたときは、正直、私はもう必要ないのかと思った。
だが、今は違う。少しでも力に慣れればと思う。



貪欲に、私の業を、私を喰らって下さい。
ちっぽけな私の存在が、生きる理由に足りないのはわかっています。
それでも。
少しでも足しになればいい。元凶を砕く、小さな糧程度にでも成ればいい。



2nd_64.jpg




焚き火の明かりに火花が散る。双方に酷く疲弊した、しかしどこか充実した笑みが見える。
術士を目指し、挫折し、闇をはいずり回りながら生き、血を吐き泥を喰らい、ここへ来た―――似た者。
男と女、短剣と吹矢、黒と白、赤と青―――対になる者。


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