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探索81日目 2009-05-14
森を抜ける。
そう急がずに、休憩しながら。
数日で一番隊とも合流が出来るだろう。
激動の探索の日々だったが、明日はもう遺跡の外になるのだ。
僅かながらの安らぎの時になるか、或いは取引などで結局は急ぐことになるのか。
どうも後者のような気配が大きいが、それならば遺跡内部の今が、休憩の時になるのだろうか。
奇妙なこの生活もすっかり板に付いていた。
静かな、野営の刻。
大した危険地帯ではないが、やはり見張りは必要だった。
一人交代の野営。だがやはり、登録番号順に順番を済ますのは変わっていない。
最初にエゼ君、以降は私、エニシダさんと続くのだった。

貴重なコーヒーの粉もこれで最後だ。あとは遺跡外での補充になるか。
折角なので順番を変わる際に、エニシダさんにご馳走することになった。
香りで他の面々にばれるかもしれないが、遺跡外の前だ、眼を瞑っていて貰おう。



橙の灯りの元。
特に会話もなく、ほんの少しだけ近い距離に座る。
あえて互いの顔を見ることもなく、姿を見ることもなく。
コーヒーの香りと、穏やかな刻が流れていく。
私も休まなければならないため、あまり長いこと起きていられないのが残念だった。



―――これは多分、通常とは異なる安らぎの時間。
勿論、このような時間を不快に思うわけがない。
だが、だからといって戦いの血にまみれた生き方から逃れようとしていない。
安らぐ時間はほんの少し、戦いの中にあってこそなのだろう。少なくとも私にとっては。

何故底辺を這うような生き方をするのかと、聞かれたこともある。
想う人と平穏に暮らせばいいじゃないか、と。

言葉で説明は出来なかった。
街や村で、或いは自給自足の生活をし、平穏に暮らしている人に向かって『何故戦いに出ないのか』と聞くようなものだからだ。
業だ。
生きる上での、私に課せられた業なのだ。
戦いに駆り出される業、平穏を維持する業。どう違うというのか。





―――然り。私も結局、道化ではいられなかったのだよ。

―――戦に駆り立てられ、高揚もせず、さりとて冷静にもなれず、ただ赴くが如し。

―――水が流れるが如く、自然に。





そう、エニシダさんに…… いや、或いは自分自身に呟いていた。
島での探索が終わり、怪異の討伐を果たした後、生きていたとしても平穏には戻れない。
否、戻るのではない。最初からなかった平穏に「戻る」とは言わない。
季節のように移ろい、静かに、或いは温かく過ごすこと、それを維持する事こそが、私にとっては『無理のある戦い』なのだろう。

呟きは焚き火が爆ぜる音に紛れ、火が燃える音に隠されたかもしれない。
或いは伝わったかもしれない。
どちらでも、結果は変わらない気がしていた。


2nd_66.jpg



もしかしたら私は――― 戦火の中に、この方を引きずり込もうとしているのだろうか。
それは酷く罪深い。
そしてこの方にとっては絶対に望まぬ事。
帰るところがある人の手首を、死人が掴んで離さないようなものだ。

流石にここまでは呟くことは出来ず、冷めかけたコーヒーを啜るに留まった。
刻が流れていく。
静かな時間の中を、コーヒーの香りと共に。
未来圏の戦火の幻視と共に。



―――Peace of Mind


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